2025年5月22日木曜日

三輪眞弘について生成AIに聞いてみた(13):最新版の生成AIに「逆シミュレーション音楽」について聞いてみると…

  本記事では、最新版の生成AIに対して三輪さんの活動について質問する企画の最後として、「逆シミュレーション音楽」について質問をした実験の結果を報告します。

 実を言えば、実際の問い合わせの順番は、今回の「逆シミュレーション音楽」が先で、「逆シミュレーション音楽」はゴールデン・ニカ受賞対象でもあり、海外を含め、Webでの情報が最も豊富であることが予想され、生成AIにとっては相対的に答えやすい問なのではないかと考えたのがきっかけでした。以下に示すように、無料版においてもWeb検索を以前より併用しているGemini、最近無料版でもWeb検索を併用するようになったchatGPTでは適切な回答が返って来たことから、それならば「新調性主義」は?いや、そもそも「虹機械」について聞き直してみたら、というように報告順とは逆に実験・検証を進めたのが実態です。

 以下に見るように、chatGPT、Geminiとも概ね妥当な回答を返しています。RAGにも通じる事前検索の併用の効果は明らかであると思いますが、それにしてもchatGPTの回答の出来の良さには驚かされました。リンクが明示されていることからわかる通り、これは記事執筆当時はIAMASの准教授であった伊村靖子さん(現・国立新美術館 情報資料室長)のコラム「情報技術は他者との関わりをどうデザインするか 第2回 三輪眞弘「イアマス・リンギング」の休止と再演から考える、音楽とコミュニティの行方」に大幅に依拠したものですが、元記事が非常に優れたものであることは勿論のこととして、その記事に基づいた回答を返す選択をし、かつこのようなスマートな要約を行ったchatGPT 4oの能力は際立ったものと言わざるを得ないように感じます。

 実を言えば、「イアマス・リンギング」という「またりさま」のヴァリアントについては(まさにそれがヴァリアントであるという理由で)主要作品表にも掲載しておらず、chatGPTの回答の仕方だと、それが「またりさま」のヴァリアントであることはわからないので、その点に限ればややミスリードな感もありますが、この回答を読んで、寧ろ作品表に「イアマス・リンギング」を追加すべきかと考えてしまった程の出来だと思います。伊村さんのコラムを中核に、最初にIAMAS ARTIST FILEの三輪さんのページを示し、最後に三輪さん自身による「逆シミュレーション音楽」の説明のyoutube動画を持ってきて締めるという構成も秀逸です。

 それに比べると、Geminiの回答には稍々違和感を感じさせる部分が散見されるものの、こちらも全体としては概ね妥当な説明になっていると思います。

 全般として、Webで得られる情報量の豊富さに応じて、今回問い合わせた「逆シミュレーション音楽」は、生成AIの情報探索の能力と収集した情報を要約する能力の高さが如実に表れたものであるように思われます。しかし今回利用したのはいずれの生成AIについても、無料版でデフォルトで利用可能なモデルに過ぎません、既に現時点で、chatGPT, Geminiとも制限つきながら、有料版で使えるより高度な推論モデルと呼ばれるLLMに基づき、かなり複雑なテーマについてのレポート作成も可能なDeep Researchと呼ばれる機能が無料版で使えるようになっています。そして現時点での生成AIの実力を測るという点では、このDeep Researchの検証を行うのがより適切であるようで、直近の生成AIの性能に対する驚きの声は、Deep Researchiに関するものが多いように感じられます。既に別の記事で報告した「虹機械」についての問いに対する回答中での「369」の「虹の技法」との混同や、今回の「逆シミュレーション音楽」についての回答のやや不自然に関られる箇所についても、2.5 Proであれば異なった結果になる可能性も否定できません。そこで次回はDeep Researchを対象とした検証実験を実施して、その結果を報告したいと思います。

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chatGPT 4o(2025.5.21):(〇)

三輪眞弘(みわ まさひろ)による「逆シミュレーション音楽」は、2002年に発表された独自の作曲理論であり、音楽とテクノロジー、そしてフィクションを融合させた革新的な試みです。この手法は、コンピュータの論理演算を人間の身体で再現し、架空の伝統文化を創出することで、音楽の本質や共同体との関係性を問い直します。(iamas.ac.jp, メディア芸術カレントコンテンツ)


逆シミュレーション音楽とは

「逆シミュレーション音楽」とは、コンピュータの論理演算(例:XOR演算)を人間の演奏行為に置き換えることで、音楽を生成する手法です。このアプローチでは、演奏者が特定のルールに従って音を出すことで、アルゴリズム的な音楽を身体的に体現します。例えば、鈴とカスタネットを用いた作品《またりさま》では、演奏者が輪になり、隣人の動きに応じて自らの演奏を決定するというルールが適用されます。このルールは、コンピュータのXOR演算を模倣しており、演奏者は自らが「演算装置」となることで音楽を生み出します。 (メディア芸術カレントコンテンツ)


架空の伝統文化の創出

三輪は、これらの作品に架空の伝統や儀式の物語を付加することで、音楽に新たな文脈を与えています。《またりさま》では、「マタリの谷」に伝わる収穫祭の儀式という設定があり、演奏行為があたかも古来からの伝統芸能であるかのように演出されています。このようなフィクションは、音楽が持つ文化的背景や共同体との結びつきを再構築し、聴衆に新たな体験を提供します。 (メディア芸術カレントコンテンツ)


代表的な作品と展開

  • 《またりさま》(2002年):逆シミュレーション音楽の初期作品で、鈴とカスタネットを用いた演奏が特徴です。演奏者が輪になり、特定のルールに従って音を出すことで、アルゴリズム的な音楽を生成します。 (iamas.ac.jp, メディア芸術カレントコンテンツ)

  • 《村松ギヤ》(2003年):17人の女性と5人の男性が円形に配置され、歯車のように回転しながら演奏する作品です。この構造も、コンピュータの論理演算を人間の動きで表現しています。 (iamas.ac.jp, メディア芸術カレントコンテンツ)

  • 《イアマス・リンギング》:情報科学芸術大学院大学(IAMAS)の入学式や卒業式で演奏される作品で、ハンドベルを用いて演奏者が特定のルールに従って音を出します。この作品は、儀式的な要素と共同体の形成を意図しています。 (メディア芸術カレントコンテンツ)


意義と影響

逆シミュレーション音楽は、音楽の作曲や演奏における主体性、共同体との関係、そして文化的背景の再構築を試みるものです。演奏者がアルゴリズムを身体で体現することで、音楽が持つ意味や価値を再評価し、新たな表現の可能性を探求しています。また、架空の伝統文化を創出することで、音楽と物語、儀式が融合した新たな芸術形態を提示しています。(メディア芸術カレントコンテンツ)


さらに詳しい情報や実際の演奏の様子は、以下の映像をご覧ください。

Masahiro Miwa"Reverse Simulation Music" (日本語版)

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Gemini 2.5 Flash:(〇)

三輪眞弘の提唱する「逆シミュレーション音楽」は、従来の音楽の概念を大きく覆す、独自の音楽制作・演奏方法論です。その核心は、コンピュータによってシミュレーションされた結果(数列や規則)を、人間が「逆」に、つまり手作業で忠実に模倣し、演奏することによって音楽を生成するという点にあります。

概念と目的

  • コンピュータと人間の役割の逆転: 通常、音楽は作曲家が楽譜に音符を記し、演奏家がそれを解釈して楽器で再現します。しかし、逆シミュレーション音楽では、コンピュータが生成した「演算システム」や「規則」が楽譜のような役割を果たし、人間がその規則を忠実に実行することで音楽が生まれます。これは、機械から人間へ、人間から機械へという、役割の逆転と言えます。
  • 「アルゴリズムそのもの」の音楽化: 三輪は、アルゴリズム(計算手順)を単なる道具ではなく、それ自体を音楽として捉えます。そのため、作者の意図が強く反映されるのではなく、アルゴリズムの論理的な結果が音楽として現れることを目指します。
  • 「架空の郷土芸能」としての音楽: 三輪の作品には、しばしば「架空の少数民族に伝わる音楽」や「未来の伝統芸能」といった物語が付随しています。これは、高度な科学的知識を持たない人々でも理解・実行可能な、シンプルで反復可能な規則に基づいて音楽が生成されるというコンセプトと結びついています。あたかも、その規則が古くから伝わる儀式や芸能の一部であるかのように提示されます。
  • 身体性と共同体の再構築: 楽譜ではなく規則に基づいて身体を動かすことによって音楽が生成されるため、演奏者の身体的な行為が重要になります。また、複数の演奏者が協力して規則を実行することで、共同体が形成され、その場限りの音楽体験が生まれることも特徴です。
  • 脱物質化から原点回帰へ: 近代以降の音楽は、楽譜や録音によって「脱物質化」が進みましたが、三輪はデジタルテクノロジーを駆使して、その逆に、コンピュータ空間で検証された出来事を現実空間で「奉納」として人力で再現・体験する「逆シミュレーション音楽」を提唱しています。これは、デジタル技術による原点、すなわち「物魔術」への回帰という側面も持ち合わせています。

特徴

  • 規則による生成: 規則は、高度な科学的知識を持たない人々でも計算可能かつ考案可能であるような、単純で明瞭なものでなければなりません。
  • 初期値の存在: 演奏開始時に特定の状態(初期値)を持つことがあります。
  • 解釈: 規則によって生み出される現象全体の特性や多様性を、聴衆ができるだけ明瞭に知覚できるよう工夫された解釈が行われます。解釈は、訓練によって反射的に行えるようになることが好ましく、誤りを犯しにくい規則や解釈が重視されます。
  • 限定された音数: 例えば、鈴とカスタネットの2つの音だけで構成される作品など、使用する音数が極めて限定されている場合があります。これは、規則そのものに集中させ、音響的な複雑さよりもプロセスそのものの美しさを追求するためと考えられます。
  • ライブパフォーマンス重視: 録音だけではその真髄を理解しにくい作品も多く、演奏の過程や、演奏者と聴衆が共有する空間体験が重視されます。

代表的な作品例

  • 《またりさま》: 鈴とカスタネットを用いた作品で、8人のプレイヤーがXOR演算(コンピュータの動作原理でもある論理演算)の規則に従って音を出していくというシンプルな作品です。
  • 《村松ギヤ》: 鈴とカスタネットを持った複数の演奏者が、歯車のように回転しながら音を奏でる作品。架空のギヤック族の春の祭典として発表されました。

三輪眞弘の「逆シミュレーション音楽」は、コンピュータ科学、数学、人類学、そして従来の音楽の枠組みを超えた、多角的な視点から音楽を捉え直す試みであり、現代音楽における独創的なアプローチとして高く評価されています(アルスエレクトロニカのゴールデン・ニカ賞などを受賞)。

(2025.5.22)


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