2025年5月22日木曜日

三輪眞弘について生成AIに聞いてみた(11):最新版の生成AIに「虹機械」について再度聞いてみると…

 本記事では、現時点での最新版の生成AIに「虹機械」について再度質問をする実験において、前回とは全く異なり、見違えるように高精度な回答が返って来ることを確認できたので、その結果について報告します。 

  以前に本ブログでは、三輪さんの活動に関連した幾つかの問い合わせを生成AIに対して行い、回答を検証する実験を幾つか行い、その結果を記事として公開してきました。一連の実験はほんの2か月程前の2025年3月に行ったものですが、特に事実関係の回答の精度が低く、生成AIの問題とされる「幻覚(Hallucination)」が強く現れた結果となったことを受け、RAGを試作して、その効果を評価するといった経過を辿りました。

 しかしながらRAG制作に用いたLLMはMetaのllama2をベースとして東京科学大が日本語向けのチューニングを行ったSwallowであり、元のLLMは既に現時点では過去のバージョンとなっています。生成AIの性能の向上のスピードは驚異的で、特に最近は次々と新しいモデルがリリースされており、その度に以前は有料版でしか利用できなかった高度なモデルが無料版でも利用可能になってきています。本ブログで検証対象とした生成AIに限っても、2か月程経過した現時点で既に、chatGPTの無料版の標準は4oに、Geminiは2.0 flashから2.5 flashにバージョンアップされています。また、当時は無料版ではGeminiのみが可能だったリアルタイムのWeb検索との併用についても、現在はchatGPT 4oで可能となっています。(Claudeでも有料版では可能ですが、現時点では無料版では依然として使うことができません。)

 そのような急激な環境変化を踏まえ、最新版の生成AIに対して三輪さんの活動について改めて質問し、回答がどのように変化しているのかを比較してみることにしました。今回はその初回として、「虹機械」について質問をした結果を報告します。「虹機械」についての前回の問い合わせ結果は強い「幻覚(Hallucination)」を伴ったもので、追加でプロンプトを送る毎にフェイクがフェイクを呼びような状況になっていましたが、RAGの試作により確認できた通り、リアルタイム検索が使えることにより一定の改善が見込める他、製品によってはLLM自体の性能の向上の効果も期待できそうです。但しClaudeは以前とバージョンが同じであり、かつ上述の通り無料版ではWeb検索の併用ができないことから、基本的に今回も前回同様の結果になるものと想定され、実際の結果も想定通りであったため、報告の対象からは除外します。

 以下ではその結果を報告します。まず対象の生成AIは以下の通りです。

  • chatGPT 4o (Web検索つき):前回はWeb検索なしの4o
  • Gemini 2.5 Flash (Web検索つき):前回はWeb検索つきの2.0 flash

 実験は2025年5月21日に行いました。

 結論を先回りして述べると、chatGPT、Geminiとも、前回とは見違えるような回答が得られて、率直に言って驚きました。特にWeb検索を併用できるようになったchatGPTの回答には、回答が引用しているWebコンテンツが明示される他、検索されたコンテンツの一覧も別途確認可能なので、どのようなコンテンツが検索されたか、引用したコンテンツについては元記事をどのように編集・要約して回答を生成しているかも確認できるようになっています。

 chatGPTで参照されているのは、私自身が前回の実験後、その結果からの反省に基づいて作成した記事(但し、本blogではなく、同一の内容をnoteで公開しているバージョン)が用いられていることが確認でき、早速、対応の効果が発言していることが確認できたことになります。それ以外にも「公案-001」の委嘱者であり初演者でもある大井浩明さんのブログや、楽譜に関するヤマハのWebページが用いられていることがわかります。それ以外にも、回答では直接引用されてませんが、日本語版Wikipediaや三輪さんのWebページ、ビティナの三輪さん関連の記事、youtubeで公開されている大井さんの演奏、本ブログの記事や主要作品表、noteの虹機械関連の別の記事も検索されていることがわかり、偶然とはいえ、前回の検証以降に行った各種の対応の成果が出ていることが確認できました。

 Geminiの回答についても、前回に比べて遥かに正確で詳細な情報を含むものになっていますが、これはchatGPTの回答で確認できた、前回以降のWebコンテンツの拡充の成果がこちらにも出ていると同時に、LLMが2.5 Flashにバージョンアップされたことにより、格段に優れた要約を行うことができるようになったことも寄与しているものと思われます。実際、元となる情報を提供した側からすれば、こちらが提供した情報が、斯くもスマートに要約されているのを確認して、驚嘆せざるを得ませんでした。

 但し、残念ながら1点だけGeminiの回答には誤りがあります。それは「虹の技法」に言及しているところで、これは同じく「虹」をモチーフとしながらも、「虹機械」とは別のシリーズである「369」の系列の作品についての説明が混入してしまったものです。これについては、私自身の記事に原因があって、同じく「虹」をモチーフにした三輪さんの作品ということで紹介をしているため、それが誤って「虹機械」の説明と混同されてしまったものと思われます。人間が読めば「369」の「虹の技法」の記述内容が「虹機械」とは別のものであることに誤解の余地はないと思いますが、この辺りが2.5 Flashの限界なのかも知れません。以下の報告では、取り消し線で該当箇所を示すことで、誤りの箇所が同定できるようにしました。

 しかしながらGeminiの場合でもより深い推論ができるモデルである2.5 Proが存在し、それを用いたDeep Researchという機能もあり、いずれも制限つきながら無料版で利用可能ですから、こちらを用いれば更に正確な結果が得られることも期待できそうです。この点の検証は今後の課題としたいと思います。 

 全体として、今回最新版の生成AIに「虹機械」について問い合わせた結果は、前回とは異なって概ね妥当な回答が得られたことがまず特筆されます。chatGPT, GeminiともWeb検索を併用することによって、LLMの事前学習の対象であったかどうかを問わず、Web上に存在する最新の情報に基づき、具体的な情報を豊富に含まれる点が前回と大きく異なる点です。しかしながらそれだけではなく、そうした情報に基づいて、非常にスマートな要約が行われていることも確認でき、最新の生成AIの要約の能力が非常に高度なものになっていることを強く印象付けられました。今後はWeb検索を併用した処理が生成AIにおいて普通のものとなっていくであろうことを前提にすればRAGの必要性は更に狭まり、本当にプライベートな情報に関する場合のみに限定されることになりそうです。一方で、三輪さんの活動についてWebでの情報を追加したことの効果は、偶然のタイミングの一致もあり、直ちに確認できることになりました。総じて今回の結果から、こと三輪さんの活動に関しては、RAGの作成の方向性ではなく、Webで公開されるコンテンツの更なる充実を継続的に進めていくことによって「幻覚(hallucination)」の影響を抑え、正しい情報を生成AIが返すことが可能になるように感じました。それにしても、理由はそれぞれとは言い乍ら、chatGPTにせよ、Geminiにせよ、2か月も経たずして、このような大幅な性能向上が確認でき、早くもRAGの試作の意義が問われることになったのには驚く他ありません。前回の報告時にも、ごく短期間のうちに状況が変わってしまう可能性について感じなかったわけではなく、充分に予想されたことではあるとはいえ、これだけの短期間で、これだけの変化を目の当たりにするとなると、やはり驚きが先に立ってしまいます。過去の記事が残り、その後の変化を報告せずにいることは、意図せずし現状認識を誤らせることにもなり兼ねませんし、今後も継続して調査を行い、定期的に検証を繰り返すことで、行く末を見届けたく思います。

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chatGPT 4o (2025.5.21):(〇)

三輪眞弘の《虹機械》は、彼の提唱する「新調性主義」に基づく一連の作品群であり、アルゴリズムによって音楽を生成する独自の手法が特徴です。これらの作品は、伝統的な調性や無調とは異なる新たな音楽的表現を追求しています。


🌈 《虹機械》シリーズの概要

《虹機械》シリーズは、以下のような作品で構成されています:

  1. 《虹機械》(2008年)
    ヴァイオリンとピアノのための単旋律作品。五度音程の積み重ねを基本原理とするセルフフィードバック・システムによって音楽が自動生成されます。

  2. 《虹機械第2番「七つの照射」》(2009年)
    ピアノ独奏のための作品で、演奏者の掛け声により音楽の進行に変化を加える構造を持ちます。この「照射」は、遺伝的アルゴリズムにおける突然変異を放射線照射に例えたものです。

  3. 《虹機械 公案-001》(2015年)
    ピアニストの大井浩明氏の委嘱により作曲されたピアノ独奏曲。前作までのコンセプトを発展させ、音域や調性の明瞭度が変化する中で、音楽的「気分」が刻々と変化していきます。


🔧 技術的特徴と構造

《虹機械》シリーズは、以下のような技術的特徴を持っています:

  • アルゴリズミック・コンポジション:五度圏に基づく状態遷移規則を用いたオートマトンにより、音の系列が生成されます。(note(ノート))

  • 単旋律構造:作品は単旋律で構成され、急速な16分音符の連続や大きな跳躍進行が特徴的です。(note(ノート))

  • ランダムな変異の導入:完全に決定論的な音の系列ではなく、一定のタイミングでランダムに音が変化することで、多様性が生まれます。(note(ノート))

これらの要素により、音楽は自律的に進行しながらも、演奏者の介入や偶然性によって新たな展開が生まれる構造となっています。


🎼 演奏と楽譜

《虹機械 公案-001》は、2015年6月12日に情報科学芸術大学院大学(IAMAS)で大井浩明氏により公開録音されました。この演奏は、YouTubeで視聴可能です。(Blog | Hiroaki Ooi)

楽譜はマザーアース社から出版されており、ヤマハの楽譜通販サイトなどで購入できます。 (Sheet Music Store)


《虹機械》シリーズは、アルゴリズムと人間の演奏が融合した新たな音楽表現を提示しており、現代音楽における革新的な試みとして注目されています。



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Gemini 2.5 Flash (2025.5.21):(△)

三輪眞弘の「虹機械(Rainbow Machine)」は、彼が2008年頃から提唱している「新調性主義」のコンセプトに基づいた主要な作品群です。これは、従来の「逆シミュレーション音楽」とは異なるアプローチで、西洋音楽の伝統、特に「調性」という概念と、彼独自のアルゴリズム的な思考を結びつけようとする試みです。

「虹機械」の主な特徴とコンセプト

  1. 「新調性主義」の実践:

    「虹機械」シリーズは、三輪が掲げる「新調性主義」を具体的に形にしたものです。「新調性主義」は、ロマン派以降の西洋音楽が辿ってきた道のりを問い直し、ミニマル・ミュージックやアメリカの実験音楽に見られる「あり得たかもしれない西洋音楽」の可能性を探るものです。「虹機械」では、伝統的な西洋楽器(特にピアノやヴァイオリン)と楽譜、演奏会形式を全面的に踏襲しながらも、その本質には三輪の独自な思想が込められています。

  2. 五度音程の積み重ねとセルフフィードバック:

    「虹機械」シリーズの多くの作品において、五度音程の積み重ねを基本原理とするセルフフィードバック・システムが用いられています。これは、ある音が次の音を生成し、それがさらに次の音を生成していくという、アルゴリズム的なプロセスを指します。このシステムによって、自動的に単旋律が生成されていきます。

  3. 音域や調性の変化、音楽的「気分」の生成:

    セルフフィードバックの過程で、音域や調性の明瞭度などが刻々と変化し、その結果、音楽的な「気分」が移ろっていきます。しかし、この「気分」の起源は、変化を続ける音型パターンに対して「機械のように」繊細に反応する人間の側にある、と三輪は述べています。つまり、アルゴリズムが生み出す論理的な結果が、人間の知覚を通して多様な音楽的表情を生み出すという考え方です。

  4. 「架空の民族」と「虹の技法」:

    「虹機械」のコンセプトには、かつて南米に存在したとされる架空の古代ツダ人という民族が、特定の奏法(「虹の技法」と呼ばれる)のみを使って音楽を奏でていた、という物語が付随しています。これは、三輪が「逆シミュレーション音楽」でも用いた「架空の郷土芸能」のアイデアに通じるもので、音楽が特定の規則や身体的行為によって生成されるという彼の思想を強調しています。

  5. 身体性と演奏:

    「虹機械」は、楽譜として書かれ、人間が演奏することを前提としています。しかし、その演奏は単なる楽譜の再現ではなく、アルゴリズムの論理に従って「機械のように」音を生成する、という身体的な行為と結びついています。これは、現代において「西洋楽器を操る身体」と音楽との関係性を再考する試みでもあります。

代表的な作品例

  • 《虹機械 ふたりの奏者のための単旋律》 (2008):ヴァイオリンとピアノのための作品。
  • 《虹機械第2番「七つの照射」》 (2008):ピアノソロのための作品で、変ホ短調の調性を持つなど、「新調性主義」の初期の代表作として知られています。
  • 《虹機械 公案-001》 (2015):ピアノソロのための作品。五度音程の積み重ねを基本原理とするセルフフィードバック・システムによって自動生成される単旋律が特徴です。
  • 《虹機械 はじまりのうた》 (2015):第9回浜松国際ピアノコンクールの第2次予選課題曲として作曲されたピアノソロ作品。

「虹機械」シリーズは、三輪眞弘がこれまでの探求を経て、西洋音楽の伝統的な要素と彼独自のアルゴリズム的思考を融合させ、現代における音楽の可能性を問い直す、極めて思弁的かつ実践的な作品群と言えるでしょう。

(2025.5.22)


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