本記事では、現時点での最新版の生成AIに「新調性主義」について質問した結果について報告します。
実験の背景については、最新版の生成AIに対して「虹機械」についての質問を再度行った結果について報告した前の記事に記載の通りですので繰り返しませんが、全体として、前回とは異なって概ね妥当な回答が得られたこと、特にchatGPT, GeminiともWeb検索を併用することによって、LLMの事前学習の対象であったかどうかを問わず、Web上に存在する最新の情報に基づき、具体的な情報を豊富に含まれる点で前回と大きく異なった結果が得られましたが、それだけではなく、そうした情報に基づいて、非常にスマートな要約が行われていることも確認でき、最新の生成AIの要約の能力が非常に高度なものになっていることを強く印象付けられたことから、「虹機械」がその実現となっているコンセプトである「新調性主義」について問い合わせたら、どのような結果が得られるかを確認しようと考えたのが、今回の実験の動機になります。
以下ではその結果を報告します。対象の生成AIは前の記事同様、以下の通りです。これも前の記事で述べたことですが、Claudeは無料版で利用できるモデルが全体と同一であり、かつWeb検索の併用が有料版のみに限定されることから、前回と同様に結果になることが想定されたため、今回の実験対象からは除外しています。
- chatGPT 4o (Web検索つき):前回はWeb検索なしの4o
- Gemini 2.5 Flash (Web検索つき):前回はWeb検索つきの2.0 flash
実験は2025年5月21日に行いました。
結果について述べると、「虹機械」についての問い合わせ同様、「新調性主義」についての質問についても、概ね妥当で、かつ的確に要約された回答が得られました。
chatGPTでは回答で参照されたWeb記事の確認ができますが、それで確認できる限り、chatGPTの回答は、大井浩明さんのブログの三輪さんの作品を取り上げたコンサートについての記事に収録された三輪さん自身や田中翼さんの解説に基づいた内容となっており、正確にて要を得た内容となっています。強いて言えば代表作品の例示にあたって、この演奏会のプログラムに含まれる2曲のみが例示されている点が稍々恣意的と言えば言えるでしょうが、誤りとは言えないでしょう。
Geminiの回答は、一読して三輪さん自身の「虹機械 作曲ノート」の内容を踏まえたものであることがわかります。単旋律に関する箇所など、若干不自然な印象を受ける箇所もあり、「接続」という言葉の使われ方が稍々一面的になっている嫌いはあるものの、誤りということはなく、寧ろ要約するにあたっての単純化と見ることも可能であり、全体としてはこちらも概ね適切な要約となっており、「虹機械」についての質問の時と同様、最新の生成AIの要約能力が非常に高度なものとなっていることを窺い知ることができたように思います。
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chatGPT 4o (2025.5.21):(〇)
三輪眞弘(みわ まさひろ)による「新調性主義」は、彼の代表的な作曲理論「逆シミュレーション音楽」に続く新たな音楽的探求であり、2008年頃から本格的に展開されました。この概念は、従来の調性音楽や無調音楽とは異なる独自の音楽生成理論を構築し、アルゴリズムに基づいた新たな調性の可能性を探る試みです。(Blog | Hiroaki Ooi)
新調性主義の概要
「新調性主義」は、既存の三和音に基づく調性音楽でも、無調音楽でもない、独自の調性音楽の理論体系を構築し、音楽生成アルゴリズムとして表現しようという試みです。このアプローチでは、音楽の進行を数学的な力学系として捉え、特定のアルゴリズムに従って音の連なりを生成します。(Blog | Hiroaki Ooi)
具体的には、五度圏上の音の移動を規定するアルゴリズムを用い、中心音への引力(調性音楽の力学)を表現します。例えば、16分音符12個からなる一小節のそれぞれの音高が決まると、次の一小節が規則から一意的に導かれます。このプロセスは、数学的には離散力学系となっており、初期値が決まれば自動的に全体が決まるという特徴を持ちます。(Blog | Hiroaki Ooi)
このような手法により、音楽の進行が中心音への引力によって引き込まれていく様子を、数学的な運動として表現しています。(Blog | Hiroaki Ooi)
代表的な作品:『虹機械』シリーズ
「新調性主義」の概念を具体化した作品として、『虹機械』シリーズが挙げられます。特に『虹機械第2番「七つの照射」』(2008年)は、ピアノソロのための単旋律作品であり、変ホ短調の「調性」を持ちます。この作品では、演奏者による「さっ」という7回の掛け声で隔てられた8つの部分から構成されており、音楽の進行がアルゴリズムに基づいて生成されます。(Blog | Hiroaki Ooi)
また、2015年には『虹機械 公案-001』が発表され、同様のアルゴリズムに基づいて作曲されています。これらの作品は、音楽の進行が数学的な力学系として捉えられ、中心音への引力によって構造化されるという「新調性主義」の理念を具現化しています。(Blog | Hiroaki Ooi)
意義と展望
「新調性主義」は、音楽の構造を数学的な力学系として捉えることで、従来の調性や無調の枠組みを超えた新たな音楽表現の可能性を提示しています。このアプローチにより、音楽の進行がアルゴリズムに基づいて自動的に生成される一方で、演奏者の介入や掛け声によって新たな展開が生まれるなど、人間の創造性と数学的構造の融合が試みられています。(Blog | Hiroaki Ooi)
三輪眞弘は、「新調性主義」を通じて、音楽の生成プロセスや構造に対する新たな視点を提供し、現代音楽における新たな地平を切り開いています。
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Gemini 2.5 Flash (2025.5.21):(〇)
三輪眞弘の提唱する「新調性主義」は、彼がこれまでの「逆シミュレーション音楽」で追求してきた音楽のあり方を、西洋音楽の伝統、特に「調性」という概念に「接続」しようとする、2008年頃から取り組んでいる新たなコンセプトです。
「新調性主義」の背景と目的
「逆シミュレーション音楽」は、コンピュータが生成する規則や数列を人間が忠実に実行することで音楽を創り出すという、極めてユニークな方法論でした。これは西洋音楽の「作曲家が楽譜に記し、演奏家がそれを解釈して演奏する」という従来のパラダイムを根本から問い直し、アルゴリズムそのものを音楽として立ち上げ、身体性や共同性の再構築を目指すものでした。
しかし、三輪は「逆シミュレーション音楽」がある種の到達点に達したと感じた際、その次にどこへ向かうべきかを模索しました。その中で浮かび上がったのが、「逆シミュレーション音楽」と西洋音楽の伝統、特に「調性」という要素との「接続」というアイデアでした。
「新調性主義」の主な目的は以下の通りです。
- 「逆シミュレーション音楽」と西洋音楽の文脈の融合: 「逆シミュレーション音楽」は、三輪にとって「西洋音楽の歴史を続けるならその先はこうなるしかないでしょう?」という結論の一つであり、元々西洋音楽の文脈から生まれたものでした。しかし、その表層的な距離は大きく、現代音楽として理解されにくい側面がありました。「新調性主義」は、この距離を縮め、西洋音楽のど真ん中で「逆シミュレーション音楽」の理念を実現することを目指します。
- 西洋楽器を操る身体との再接続: 「逆シミュレーション音楽」が、楽譜や演奏技術といった「すでに与えられたもの」とされてきた西洋音楽の前提を徹底的に疑う試みであったのに対し、「新調性主義」では、西洋音楽の伝統によって生み出され、今後も(おそらく)存在し続けるであろう西洋楽器を操る身体を前提とした音楽に、改めて挑戦しようとしています。これは、三輪にとって決して自明のことではなく、むしろ改めて向き合うべき重要な課題として捉えられています。
- 「接続せよ」という命令: 三輪は、このコンセプトを「接続せよ。」という命令として表現しています。これは、これまで彼が探求してきた「あり得るべき音楽」と、西洋音楽の歴史の中で培われてきた「調性」という概念を、新たな形で結びつけようとする強い意志を示しています。
「新調性主義」における「調性」の捉え方
「新調性主義」における「調性」は、単に長調や短調といった古典的な調性体系を指すだけではありません。三輪は、「調性」をより根源的な「関係性」や「論理」として捉えていると考えられます。
例えば、彼の作品に「単旋律」という形式が現れることがありますが、これは伝統的な調性音楽の最もシンプルな要素の一つです。しかし、その背後には「逆シミュレーション音楽」で培われた、規則やアルゴリズムによって音の生成プロセスをコントロールする考え方が潜んでいます。つまり、表面上は調性を持つ音楽のように聞こえても、その生成原理は従来の作曲とは異なる、計算的・論理的なアプローチに基づいているのです。
代表的な作品例
- 《虹機械第2番「七つの照射」》(2008):ピアノソロのための単旋律の形式をとり、変ホ短調の「調性」を持っています。これは「新調性主義」のコンセプトの下での初期の作品の一つとして知られています。
まとめ
三輪眞弘の「新調性主義」は、「逆シミュレーション音楽」で培われた独自の思想と方法論を、西洋音楽の伝統的な「調性」という概念と結びつけ、新たな音楽表現の可能性を探る試みです。これは、単なる過去への回帰ではなく、コンピュータ時代における音楽のあり方を深く洞察し、現代社会における音楽の意味を再構築しようとする、三輪ならではの挑戦と言えるでしょう。
(2025.5.22)
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