2025年3月13日木曜日

三輪眞弘について生成AIに聞いてみた(0):はじめに(連載開始にあたって)・作品の特徴について(Geminiの場合)

  近年の人工知能(AI)技術の進展・システムの性能向上は著しく、特にOpenAIが2023年に提供を開始した大規模言語モデル(LLM)GPT-4およびそれに基づく対話形式のアプリChatGPTのアップデート以来、特にデコーダ形式のTransformerを基盤とした大規模言語モデルを用いて、テキストを「プロンプト」として入力すると後続するテキストを推論・生成するシステム(所謂「生成AI」)をアシスタント・エージェントとして活用する可能性が現実のものとして取り沙汰されるようになってきました。大規模言語モデルの規模と性能の向上の関係については、スケーリング則が成り立つことがこれまでにも言われてきましたが、それだけではなく或る種の創発による相転移的な性能向上も近年確認されているようです。本稿執筆時点では、規模の拡大に対して性能向上が頭打ちになる傾向が現れてきており、スケーリング則が成り立たなくなってきているのではないか、その原因として基盤となっているTransformerのモデルの限界に到達したためではないかとか、インターネット上で利用可能なリソースをほぼ使いきってしまったことが原因ではといったことも言われていますが、既に現時点までで、従来の人工知能研究の常識を上回る結果が出ていることは確かだと思われます。

 思い起こせば「深層学習」と呼ばれるニューラルネットワークを用いた機械学習手法が最初は特に画像処理の分野で画期的なブレイクスルーをもたらして、にわかに人工知能技術が再び脚光を浴びるようになったのはもう10年以上前のことでした。特に印象的だったのは、まだ人間に勝てるプログラムができるのは10年先だと言われていた囲碁において、AlphaGOが人間の名人を完全に凌駕するという結果を出したことで、それは丁度10年前の2015年のことでしたが、その時に受けた衝撃の強さは未だに昨日の出来事のように思い出されます。それでも自然言語処理や時系列のデータの扱いのレベル向上は従来のリカレントネットワークベースのモデル上では難しいだろうと言われていたのですが、これも2017年に発表されたTransformerベースの大規模言語モデルの登場により状況が様変わりしてしまいます。それまでは実用にならないレベルであった機械翻訳の性能が飛躍的に向上し、更には2022年に登場したChatGPTをはじめとする生成AIベースのチャットボットは大きな社会的反響をもたらしました。それでも3年前の登場直後は、回答の精度の問題などもあって懐疑的な意見もあったのですが(実は私もどちらかというと懐疑的な立場で、Transformerが発表された少し後の時期にあたる2018年3月24日にロームシアター京都での三輪さんとの対談「人工知能と音楽の未来」においても表明し、記事「人工知能と音楽の未来・梗概と補遺」にも記載した立場を、その後も基本的に変わらずに維持し続けていましたが)、2024年にGPT4が登場にするに至って、従来は困難だと思われてきた段階的な推論が必要とされる問題についても精度・速度の両面において人間以上のパフォーマンスで解いてしまい、自然言語での指示により、文章の生成・編集のみならずプログラムのコード作成や検証まで行える能力が獲得されたことが広く認識されるようになりました。今や、古典的AIが目標としてきた高度な推論のような領域が、少し前までは最も技術的進歩が遅いと考えられていた自然言語処理の枠組みの中で解決できてしまいつつあるのは思えば皮肉なことです。その一方で、これも古典的なAIやロボティクスの問題であった現実世界(リアル・ワールド)への記号接地(シンボル・グラウンディング)の問題を恰もすっ飛ばしてしまい、記号の世界のネットワーク上で全てが完結してしまうかに見える状況は、差異の体系であるソシュール的な記号論の妥当性が示されたかのようでもあり、哲学的にも興味深い問題を提起しているように思われます。記号の(人間的な意味合いでの)「意味」をわかっているとは到底思えないにも関わらず、いわゆる「分布仮設(distribution hypothesis)」ベースの素朴で単純な意味理解に基づくモデル(その替わりに極めて大規模なのですが)上で、高精度な正解が得られてしまうのは如何にしてなのか、あるいはまた、単に単純に規模を大きくしただけでは起こらない相転移現象が、モデルのパラメータの値がどのように変化した結果として生じるのかのメカニズムについては未解明で、まだこれから説明されるのを待っている状況であり、今後の分析・研究が俟たれます。

 そしてそのような理論的な問題は措くとしても、その結果として、これまでは理論的な極限の如きものとして想定されるだけで、どちらかといえばSFの世界の中での話に過ぎなかった汎用人工知能が俄かに現実的なものになってきたことは否定できません。勿論、かつての深層学習技術が直ちに汎用人工知能に繋がるものではないのと同様、現在の生成AIを支えているTransformerベースの大規模言語モデルの規模を単に拡大し続けることによってシンギュラリティが実現するわけではない(本稿冒頭でスケーリング則について触れたところで述べた通り、既にその兆候が現れているようですし)と考えますが、数年前の予測を良い意味で裏切る大幅な性能向上が既に現実に達成されている以上、シンギュラリティを空想として否定することは最早できなくなったと認識すべきタイミングが来たように思います。より現実的な領域では、これまで複雑で機械化・省力化が困難であるとされてきた様々なタスクが、AIによって支援され、代行されるようになるのは間違いありません。生成AIが芸術や美学にもたらす影響は一先ず措いても、そうしたことを議論する地平の方がこれまでになくドラスティックに変貌してしまう、しかもごく短期間でそうなってしまう可能性に目を瞑ることはできなさそうです。

 三輪眞弘さんの活動に関する情報は、従来より存在する楽譜や書籍、雑誌、公演プログラム、CD・DVDといった録音媒体に添付されたリーフレットのみならず、三輪さん自身のWebページやX(Twitter)やYoutubeでの発信を含め、Web上に蓄積されるようになり、いつでも、誰でも容易に取得できる状況にあり、これはインターネット普及以前に活動した作曲家とは大きく異なっている点だと思いますが、今後はそうした情報に対して、従来の検索に替わって、生成AIに質問・指示をすることで情報の収集を行うようになるでしょう。のみならず収集した情報の整理や分析、調査や分析結果のまとめに至るまで、そのために必要となる場合には、データ分析やプログラムの作成も含めて、AIエージェントの支援によって行うことになっていくものと思われます。

 それとともに「生成AI」が返す回答が正しく適切であるかどうかが大きな問題としてクローズアップされ、「アラインメント」と呼ばれる調整を如何に行うかが技術的課題となっています。特に「幻覚・ハルシネーション(Hallucination)」と呼ばれる、AIが誤った情報や架空の内容を生成する現象は、モデルの大規模化によって初期に比べれば改善傾向にあるとは言いながら、まだまだ頻発するため、特に大きな問題となっています。 

 それでは現時点において三輪さんに関する情報収集に生成AIを活用することはどの程度できるのでしょうか。そこで「三輪眞弘について生成AIに聞いてみた」と題して、思いつくままに生成AIに対して三輪さんの活動についての質問をした結果を報告していきたいと思います。そもそもアルゴリズミック・コンポジションを作曲の方法論とし、今日の人間とコンピュータを始めとする各種のメディアとの関わりの中で、人間の営みとしての「音楽」を問い直す方向性を持っている三輪さんの活動について考察するにあたり、生成AIがどのように関わってくるのかは、それ自体独立に論じるべき大きな問題でしょうが、その問いにアプローチするにあたって、三輪さんの活動についての情報収集を素材として生成AIの現状を把握することは、準備作業としての意味合いを持つものと思います。少しだけ先取りして述べるならば、例えば「幻覚・ハルシネーション(Hallucination)」にしても、それをフェイクか否かが問題となる三輪さんの活動に関する事実性の水準ではなく、その創作との関わりを問題にするならば、「逆シミュレーション音楽」における「命名」の相に含まれる「由来」に相当するもの、三輪さんの作品に含まれる、「…という夢をみた」という形を持つ所謂「カバーストーリ―」との関わりが考えられます。一人の人間がアクセスすることは既に不可能な分量に達している、Webに存在する莫大な情報を素材に学習をした大規模言語モデルを基盤とした生成AIの語りは、或る種の「集合的無意識」の産物、「エスの語り」と見做すことはできないのか、といった問が直ちに思い浮かびます。ここでの企図は直接的にそうした問題への考察のための素材を得ることにある訳ではありませんが、生成AIが三輪さんについて何を語り、何を為しうるのかを調べることを通じて、後日そうした考察を行うための地平形成ができれば良いと考えています。

 他方で、ここではドメインを限定した場合の生成AIの回答精度をシステマティックに調査し、分析・評価することを企図しているわけでもありません。大規模言語モデルの開発は活発に行われており、次々と新しいモデルが登場し、性能の向上は(少なくともここしばらくは)日進月歩と言って良いと思います。例えば、今日試したらだめでも、半年後にバージョンアップされた後に同じ質問をしたら正しい答えが返ってくるということは普通に考えられます。ある時点のある商用サービスに限定しても、多くの場合にはサービスには費用に応じた幾つかのグレードが用意されており、グレードに応じて利用できるモデルが異なったり、選択の幅が変わるので、それに応じて回答も当然変わってきます。また生成AIから適切な回答を得るためには、質問の仕方(「プロンプト」の与え方)に工夫が必要で、その巧拙によって回答は変わりますので、調査・研究ならばそうした側面についての考慮・準備も必要でしょう。

 上記のような点を踏まえた上で、ここではあくまでも「ある時点で、一般的に利用可能なある生成AIに、三輪さんに関してこのような質問をしたら、こんな答えが返ってきて、こんなやりとりになった」という事例を報告することに留めたいと思います。一方で、回答の真偽については、調査可能な範囲でのファクトチェックを行ってコメントしようと思います。最先端では既にインターネット上の利用できる情報はあらかた学習してしまったのではないかというようなことがまことしやかに囁かれる程、大規模言語モデルの規模は巨大化していますが、それでもなお、人類が言語情報としてこれまで蓄積してきた情報のごく一部に過ぎないのは明らかでしょうし、利用できる情報が誤っていたり、相互に矛盾する複数の情報があったり、不十分なために正しい答が生成できない場合も多々あるでしょう。生成AIの仕組み上、ある一定の確からしさを持つと判断すれば(「彼」にとっては正解である)それを返してくるため、回答の利用にあたってはファクトチェックが欠かせないのが現実です。更に言えば、同時代の作曲家である三輪さんに関するWeb上の情報は極めて不十分なものであると常々感じており、微力ながらブログを通じて三輪さんに関する情報を公開したり、活動に接した報告をしたり、分析・考察を公開したりしているのは、少しでも三輪さんの活動についての情報を共有・拡散したいと思っているからに他なりません。幸い三輪さんについては、(あくまでも自分の中での相対的な比較においてに過ぎないですが、)他の作曲家と比べれば多くの知識の蓄積もあり、また手元にあって利用可能な情報もそれなりにあるので、何とか一定程度のファクトチェックなら行えそうですし、情報提供・共有することに(間違いについては注意喚起の意味合いも含めて)一定の意義も認められるのではないかと考えます。

 またこれは三輪さんの活動に特有の事情ですが、既に述べたように三輪さんが創作の方法論としてアルゴリズミック・コンポジションを用いていることから、その作品の分析や考察にあたり、コンピュータを用いた分析やシミュレーションを行う場合があり、私もこれまで自分が行った試みについて幾つか報告を行っています。そこで生成AIへの問いとして、単なる知識の収集だけではなく、作品の分析やシミュレーションを行わせるような課題も含めて行きたいと考えています。

 対象とする生成AIは以下の通りです。

  • ChatGPT(Web版):GPT-4ominiが標準(利用制限があるがGPT-4oを利用制限内で利用)
  • Gemini(Web版):Gemini 2.0 Flash
  • Claude for Windows ver.0.8.1(Windows版アプリ):Claude 3.7 Sonnet

いずれもPCで無料で利用できるバージョンを用います。利用できるモデルはデフォルトのものとし、個人向けカスタマイズのコンフィギュレーションやアプリケーション連携はせずに利用します。報告にあたっては問い合わせをいつ行ったかを記載することとし、必要に応じて使用されたモデルも記載します。現時点ではチャットの記録は保存することとし、フィードバックのオプトアウトはしていませんが、これは現時点での履歴のバックアップが済んでいないことが主たる理由であるため、履歴の保全が完了した後はオプトアウトする可能性もあります。もっともここで行う質問に個人情報や機密情報が含まれる可能性は極めて低いことから、フィードバックを優先するかも知れません。なお生成AIは記録の保存の有無によらず、一定の期間、一連のチャットを記憶しており、それらも文脈情報として利用して以降の回答を生成しますので、文脈が異なれば違った回答が返ってくる可能性もあります。

 ここでは手始めに、上記生成AIのうちGeminiに対して最初にした質問とその回答を例示することにします。実はGeminiに対して利用を開始直後に最初にした質問が偶々これだったのですが、ご覧いただけばわかる通り、若干上滑りな部分もあるものの、概ね妥当な答えを返していると言っていいと思います。しかしながら、他の生成AIは違った答えを返してきていますし、その中には明確な誤りが含まれることを既に本稿執筆時点で確認していますので、次回以降、それらについて順次紹介していきたいと思います。(少し予告をしておくと、chatGPTは突っ込んだ答を生成しようとするあまり暴走気味で、知識に対する問に対しては幻覚・ハルシネーション(Hallucination)」の度合いが著しいケースが見受けられます。その一方で、シミュレーションのためのコードを生成させるといった課題に対しては非常に高い能力を示すことを確認済です。)

(2025.3.13 公開)

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プロンプト: 三輪眞弘の作品の特徴は?

Gemini (2025.3.8)

三輪眞弘さんの作品の特徴は、多岐にわたる活動と独自の音楽理論に基づいています。主な特徴は以下の通りです。

  • アルゴリズミック・コンポジション:
    • コンピュータを用いた作曲技法を探求し、アルゴリズムに基づいて音楽を生成します。
  • 逆シミュレーション音楽:
    • コンピュータによるシミュレーションを人間の演奏によって再現する独自の音楽理論を展開しています。
    • アルゴリズムによって生成された「指示書」に基づいて、演奏者が解釈し演奏を行います。
  • 方法主義:
    • 音楽における方法論を重視し、独自の理論を構築しています。
  • メディア・アートとの融合:
    • 音楽とメディア・アートを融合させた作品を制作しています。
  • 多様な活動:
    • 作曲だけでなく、CD制作、著作活動、他分野のアーティストとのコラボレーションなど、幅広い活動を行っています。

これらの特徴から、三輪眞弘さんは現代音楽における革新的な作曲家として評価されています。


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